2007年5月20日日曜日

『早苗』考

 『岩波国語辞典』によると、『早苗』は「稲の苗で、苗代から田に移し植えるころのもの」とあります。でも、女性の人名にも使われることのあるこの言葉は、さらにもうすこし奥深いニュアンスもあるような気がします。
 私は、稲の一生のなかでこのころのものが一番輝いているのではないかと感じています。若々しく、キラキラしていて、まさに嫁入り前の娘のような姿にたいして、先人はこの言葉を贈ったのではないでしょうか。接頭語「早」は、五月を意味するそうですが、『早乙女(さおとめ)』などとともに、『早苗(さなえ)』という語彙は五月の澄み切った空のように、私たちの心にさわやかな印象をあたえてくれます。そんなことを考えながら、苗代の『早苗』を眺めました。