2022年1月17日月曜日
『白狗秋千架 』(白い犬とブランコ)
農作業は、12月いっぱいで、今はあまりにも寒いので、完全に冬ごもり状態です。畑の片付けなど、やることはたくさんあるのですが、充電期としてあえて農作業はやりません。
以前、買っておいた本やDVDを見ていたら、ノーベル文学賞受賞作家である莫言さんの短編集のなかの『白狗秋千架 』が印象強かったので、再度原作を読み直し、映画を見ています。中国語で20ページほどのこの短編は、川端康成の『雪国』の「黒い屈強な秋田犬が川縁の石の上で温泉のお湯を舐めている」という描写からひらめいて書かれたものだそうです。ブランコの綱が切れて、大けがをさせて後遺症が残った恋人と、街に出て大学を出て教師になった青年を巡る物語ですが、片目の失明という後遺症が残った娘が自ら身を引く形で唖の男に嫁いでこれまた唖の三つ子の男の子を産むのです。十年ぶりに故郷に戻った青年と娘の再会、その中で罪の意識をもっている青年と自ら身を引いた娘の心の葛藤が描かれていくのですが、最後の数行になると、グサっと心が抉られるような場面が描かれるのです。
…你说实话,要是我当时提出要嫁给你,你会要我吗?” 我看着她狂放的脸,感动地说;“一定会要的,一定会。” “好你…你也该明白…怕你厌恶,我装上假眼。我正在期上…我要个会说话的孩子…你答应了就是救了我了,你不答应就是害死了我了。有一千条理由,有一万个借口,你不要对我说。” (… あの時お嫁にしてくれといったら、してくれた。…ぜったいしたよ。…わかっているでしょう。あなたが気味悪がるといけないから義眼をしてきたわ。今なら、赤ちゃんができるわ。私は話し相手になる子がほしいの。いいと言ってくれたら私を救うことになるし、断ることは私を殺すことよ。どんな言い訳も言っちゃだめよ。)
この短編の題名にある白い犬は、高密県東北郷原産で、青年が村を離れるときに娘に託したものなのですが、物語を紡いでいく上で重要な役割をはたしていきます。村を離れる青年を高粱畑へ導いていって、上記の場面になるのですが、犬が青年を連れてこられるかどうかに自分たちの運命をかけるというのです。
「白い犬とブランコ」のさわりを紹介してみました。今は、ネット社会で、あまり本を読まなくなりましたが、莫言文学は、いつ読んでも重量感満載で、また読みたくなります。