2011年11月3日木曜日

南アルプスの女王 仙丈ヶ岳

           仙丈ヶ岳頂上直下のライチョウはもう冬の装い

 二週間前に八ヶ岳・赤岳山頂で眺めた南アルプスの山々の姿には、とても印象深いものがありました。来年は是非登ってみたいと思ってネットでいろいろと調べていると、農作業の忙しさなどとるに足らない瑣事になってきます。南アルプススーパー林道を通るバスは、11月6日で今季は終了と聞けば、ますます行きたいという気持ちが募ってきます。そういうわけで、今日南アルプスの女王といわれている仙丈ヶ岳(3033メートル)に登ってきました。

 南アルプススーパー林道は、自家用車はおろかバイクや自転車も通行できません。仙丈ヶ岳の登山口の北沢峠へは、伊那市営の林道バスに乗っていくしかありません。しかも帰りの終バスが午後4時なので、これに間に合うように下山しないと峠にある山小屋に泊まらなければならなくなります。ネットで調べた情報によると、仙丈ヶ岳へは登り4時間、下り3時間の計7時間かかるとあります。余裕をもって日帰り登山をするには、朝6時の一番のバスに乗らなければなりません。そんなわけで、家を深夜2時半に出発して、5時にバスの出発点である伊那市(旧長谷村)の仙流荘前の営業所に到着、そこから6時の始発バスに乗って7時に北沢峠に着きました。

 小仙丈ヶ岳までは、かなり急な登山道が続きます。はじめはコメツガのうっそうとした林のなかを登っていきます。

 森林帯をすぎて視界が開けると、北沢峠の反対側に東駒ヶ岳(甲斐駒ヶ岳)(2966メートル)が見えるようになります。この山は、一般的には甲斐駒ヶ岳と呼ばれていますが、伊那谷では木曽駒ヶ岳を西駒ヶ岳、甲斐駒ヶ岳を東駒ヶ岳と呼ぶのだそうです。

さらに東側に目をやれば、アサヨ峰(手前左側、2799メートル)、鳳凰山(観音岳で2840メートル)が見えてきます。鳳凰山の地蔵岳のオベリスクは写真ではよくわかりませんが、実際にはかなりはっきりとその尖った姿が見え、とても印象的でした。鳳凰山は、深田久弥の『日本百名山』の一つでもあり、その中でオベリスクに初登頂したのはウォルター・ウェストンで明治37年のことであると記されています。

 登りはじめて約2時間で、小仙丈ヶ岳(2855メートル)に着きました。

 ここまで来ると、富士山に次いで2番目に高い北岳(3193メートル)が目の前に見えてきます。その右側に見えるのが4番目に高い間ノ岳(3189メートル)です。ちなみに3番目は奥穂高岳の3190メートルで、仙丈ヶ岳は18番目だそうです。

 小仙丈ヶ岳から、仙丈ヶ岳へは稜線歩きになります。眼下に馬の背ヒュッテが見えます。周りにあるダケカンバ林の曲がった幹が描き出す模様が、とても印象的でした。

 小仙丈カールです。

 小仙丈カールの反対側は藪沢カールで、仙丈小屋が見えてきました。仙丈小屋も馬の背ヒュッテもすでに閉鎖されているそうです。

 頂上直下の稜線に、ライチョウが3羽餌を探していました。羽もほとんど白くなって、冬のモードになってきていました。人間にたいする警戒心もあまりなく、そばによって写真をとっても、逃げません。

 仙丈ヶ岳の頂上も近くなってきました。頂上にいる人たちの姿もはっきりとわかります。

 もうここまで来れば、頂上まであと一息です。

 山頂に到着です。9時50分でした。2時間40分ばかりで着いてしまいました。

 頂上の一角で、登ってきた稜線を眺めながら、一休みです。おにぎりを頬張っていると、みるみる間にガスがかかってきて、小雪が舞い始めました。「さすがに3000メートル級の山だ」という実感がわいてきました。長居は無用とばかり、20分ほど山頂にいて、下山を開始します。
  まだ、山頂には大勢の登山者がいました。この時期にこれほど登山者がいるとは思いませんでした。

 下山途中、稜線越しに見えた東駒ヶ岳(甲斐駒ヶ岳)です。来年は、この山に是非登ってみたいと、いまから期待に胸をふくらませています。

 北沢峠に戻ってきたのが、12時10分過ぎでした。登山時間は5時間で、標準コース時間の7割といったところでした。山小屋の長衛荘で温かいうどんを一杯食べ、余裕で1時発のバスに乗って帰ることができました。しかし、このうどんはとても塩辛かったです。汗を大量に流したあとだったので身体が塩分を欲したらしく、汁まで飲んだのがいけなかったのか、その後は水を飲み通しでした。